なぜこの本を選んだのか

2024年4月、毎年イタリア・ボローニャで開催されているブックフェア(Bologna Children’s Book Fair)に初めて参加しました。
世界中から集まったたくさんの人とたくさんの本。
その中で目にとまった絵が『アルトローヴェ ふしぎな村の物語』の原作の表紙でした。
机に置かれたその本を手にとり、そばにいた著者ミケーレ・カッペッタとイラストを担当したモニカ・バレンゴと少しおしゃべりをして、息子あてにサインを書いてもらいました。
その晩ボローニャのホテルの部屋でこの物語を読み、次の日また同じスタンドに向かい「この本を翻訳してみたい」と話しました。
私はそれまで、編集の仕事も、仕事として小説や絵本を翻訳をしたこともありませんでしたが、その約1か月後に本屋さんで出会った『じかん屋テンペリア』とともにぜひ日本のみなさんに読んでほしいと思い、2025年1月に出版社を設立しました。

なぜこの本を選んだのか…

いま5歳の息子は北イタリアのボルツァーノにある公立の幼稚園に通っています。
幼稚園には、両親ともイタリア人という子どもたちはごく一部で、アルバニア、ボスニアをはじめ、東ヨーロッパ、南アメリカ、アフリカ、アジアなど、さまざまな国にルーツを持つ子どもたちがいます。
ロシアにルーツを持つ子とウクライナから戦火を逃れてきた子がいっしょにすごしています。
けんかも日常茶飯事ですが、みんなで助け合い、笑顔であふれています。

私たち大人は、事あるごとに子どもたちに「おともだちと仲良くしなさい」と言います。
では私たち大人はどうでしょう?

『アルトローヴェ ふしぎな村の物語』は、村人たちが豊かな個性はそのままに、アルトローヴェという小さな美しい村でひとつになって生きていくファンタジーです。
ちがいを認め合う寛容さが私たちの生きる社会にも必要なのだと思います。
子どもたちにも大人のみなさんにも、物語と絵を楽しんでいただくのはもちろん、そんなことを考えるきっかけとなる1冊になったら嬉しいです。

『じかん屋テンペリア』のときもそうですが、私がこの本を選んだというよりは、この本が私を待っていてくれたような気がします。たいせつな友人を待っていたかのように。

原作者のミケーレとモニカ
2024年ボローニャのブックフェアにて

目次