時間を使って何ができるの?


書店で偶然この絵本の原作を目にしたあの日から、家族、原作者、友人、宇宙物理学者、
イベントでお話しした皆さん、読者の皆さん、いろんな方と時間について考える機会があります。

「時間の使い方」を考える一方で、翻訳出版に向けてこの本を編集していたときも、
そして今も、日々の生活のなかで「時間がない」とよく思っています。

『じかん屋テンペリア』のあとがきに宇宙物理学者の池内了先生が書いてくださったように、

時間がいっぱいあれば、自分のしたいこと、しなければならないこと、し忘れていること、しようと前々から思っていること、今のうちにしておいた方がいいこと、そんなたくさんのことができると思えるからです。

今日、時間管理は学校での教科のように学ぶべき分野となっていて、講座やマニュアル、テクニックといったものまであります。
まるで時間は私たちとはまったく別の存在であるかのように、私たちは常に時間を管理し、効率化しようとしています。

この絵本を読んだから、翻訳出版したからといって、私自身、以前よりゆったりとした生活を送ることができるようになったか、これからそうなるかというと……。
でももしかしたら、ほかの人からすると私の生活はゆったりしているのかもしれません。
時間の感じ方は人それぞれです。
それは、私たちは時間の中で生きていて、時間は私たちに属するものだからではないでしょうか。

『じかん屋テンペリア』の原作者であるルカ・コニョラートとの対話の最後に、5歳の息子がした質問とそれに対するルカの答えを今でもときどき思い出します。
それは事前に私と一緒に考えたものとは異なる、息子自身が思いついた質問でした。

池内先生が書いてくださったあとがき「利己の時間と利他の時間」にも、つながるものがあるような気がします。

「時間を使って何ができるの?」

「好きなことを、ぼくたちを幸せにすることをしたらいいのさ」


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